今西千登瀬の「住まいの判断力」講座 Vol.1東京23区でマイホームを買う前に考えたい。「買い時」より大切なのは、自分で判断する力

東京23区の住宅価格が高騰する今、「買い時」を気にする人は少なくありません。しかし、本当に大切なのはタイミングではなく、自分で判断できる力です。市場データの読み解き方や売り出し価格と成約価格の違いなど、不動産の現場で感じるリアルを交えながら、後悔しない住まい選びの考え方をお伝えします。

「今、家は買い時ですか?」

不動産の仕事をしていると、この質問を本当によくいただきます。

ニュースでは、

「マンション価格は過去最高」

「住宅ローン金利が上昇」

「今後は価格が下がるかもしれない」

SNSでは、

「今すぐ買うべき」

「いや、まだ待つべき」

毎日のようにさまざまな情報が流れています。

情報が多い時代だからこそ、多くの方が「誰かの答え」を探してしまいます。

でも私は、お客様から「今が買い時ですか?」と聞かれたとき、すぐに答えをお伝えすることはありません。

なぜなら、「買い時」は他人が決めるものではなく、自分自身で考えるものだと思っているからです。

「市場の買い時」と「あなたの買い時」は同じではありません

住宅市場には相場があります。

価格が上がることもあれば、下がることもあります。

金利も変動します。

もちろん、それらを知ることはとても大切です。

しかし、市場の状況だけでは、その人にとって「買うべきタイミング」は決まりません。

例えば、

  • お子さんの入学を控えているご家庭
  • 共働きで通勤時間を短くしたいご夫婦
  • 在宅勤務が増え、住環境を見直したい方
  • ご両親の近くへの住み替えを考えている方

同じ住宅市場を見ていても、それぞれの「買い時」は違います。

だから私は、「世の中の買い時」ではなく、「あなたにとっての買い時」を一緒に考えたいと思っています。

データは「答え」ではなく、「判断するための材料」

私は市場データを見ることが好きです。

例えば、REINS(東日本不動産流通機構)が毎月公表している首都圏の中古住宅市場データも必ず確認しています。

2026年6月のデータでは、首都圏の中古マンション市場は、成約価格や成約㎡単価が前年を下回る一方で、在庫件数は増加しており、市場に少し変化の兆しが見え始めています。

こうしたデータを見ると、

「少し買主が比較・検討しやすい環境になってきたのかもしれない」

という仮説を立てることはできます。

しかし、データは答えではありません

データは、自分で判断するための材料です。

数字だけを見て「買う」「買わない」を決めるのではなく、その背景を考えることが大切です。

現場で感じる「売り出し価格」と「成約価格」の違い

最近、私が現場で感じているのは、売主様が希望する売り出し価格と、実際に成約する価格との間に差があるケースです。

市場価格が上昇したことで、「できるだけ高く売りたい」というお気持ちは自然なことです。

一方で、購入を検討される方は以前より慎重になっています。

私は購入をご検討される方に、価格だけを見るのではなく、

  • この物件はいつから販売されているのか
  • 価格改定は行われているのか
  • 売却理由は何か

といった背景も確認することをおすすめしています。

こうした情報を知ることで、冷静な判断や交渉につながることがあるからです。

「高く売れる」という情報を、そのまま信じない

最近では、「今なら高く売れる」「無料査定」といった広告を目にする機会も増えました。

もちろん、市場価格が上昇しているエリアがあることは事実です。

ただし、査定価格は「参考となる価格」であり、実際の成約価格とは異なる場合があります。

大切なのは、広告の言葉だけを信じることではありません。

市場の状況や近隣の成約事例、物件の状態など、さまざまな情報を総合的に見て判断することです。

情報が多い時代だからこそ、「情報を集める力」だけでなく、「情報を読み解く力」が求められていると感じます。

まとめ|「買い時」は、誰かにもらう答えではない

住宅市場には相場があります。

価格も金利も、住まい選びに欠かせない情報です。

しかし、人生には一人ひとり違うタイミングがあります。

子どもの成長。

働き方の変化。

家族との時間。

これから送りたい暮らし。

それらを踏まえて、「今がわが家の買い時だ」と納得できたときが、本当の買い時ではないでしょうか。

私はこれからも、「家を売るための情報」ではなく、「自分で判断できる力を身につけるための情報」を発信していきたいと思います。

次回予告

Vol.2

ネットの不動産情報を鵜呑みにしない|『価格』を見る前に知っておきたいこと

SUUMOやHOME’S、アットホームなどの不動産サイトには、多くの物件情報が掲載されています。

しかし、その価格は「売り出し価格」であり、必ずしも「実際に売れた価格」とは限りません。

また、掲載期間や価格変更の有無など、少し視点を変えるだけで見えてくる情報もあります。

次回は、誰でも見ることができる不動産情報サイトを例に、「数字に振り回されず、自分で判断するための見方」をお伝えします。

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