今西千登瀬の「住まいの判断力」講座 Vol.4「借りられる金額」と「無理なく返せる金額」は違う。住宅ローンは「住むため」のもの。人生を苦しくしない資金計画を考える

「借りられる金額」と「無理なく返せる金額」は、同じではありません。

住宅ローンは、家を買うためだけのものではなく、これからの暮らしを支えるための手段。

借入可能額だけを基準に住まいを選ぶのではなく、将来の収入や支出、家族の変化、貯蓄や老後まで見据えて考えることが大切です。

「いくら借りられるか」ではなく、
「この家で、無理なく暮らし続けられるか」

住まいの判断力とは、未来の自分と暮らしを想像して選ぶ力です。

「この年収なら、これくらい借りられます」

住宅購入を考え始めると、金融機関やシミュレーションサイトなどで、借入可能額を目にすることがあります。

でも、ここで一度立ち止まって考えてほしいのです。

借りられる金額」と「自分たちが無理なく返せる金額」は、本当に同じでしょうか?

私は、住まい選びにおいて大切なのは、

「いくら借りられるか」ではなく、

「その住宅ローンを抱えながら、どんな暮らしを続けたいのか」を考えることだと思っています。

住宅ローンは、そもそも何のためにあるのでしょうか?

住宅ローンは、マイホームを購入するために必要な資金を金融機関から借り、長期間にわたって返済していく仕組みです。

つまり本来の目的は、

住む場所を確保するための資金を、時間をかけて返済すること

にあります。

住宅ローンそのものが悪いわけではありません。

むしろ、住宅を一括で購入できない人にとって、現在の暮らしを始めるための大切な選択肢です。

ただし、住宅ローンを組んだ瞬間から、その返済は毎月の家計に組み込まれます。

だからこそ、

「家を買えるか」だけではなく、

その家に住みながら、どんな人生を送りたいか

まで考える必要があります。

「借りられる額」を基準に家を選ばない

住宅ローンの審査では、年収や勤続年数、他の借入などから、借入可能額が算出されます。

しかし、金融機関が「貸せる」と判断する金額と、あなたの家庭にとって「安心して返せる」金額は別のものです。

たとえば、

・子どもの教育費

・車や家電などの買い替え

・旅行や趣味

・老後への備え

・住宅の修繕費

・固定資産税

・マンションなら管理費・修繕積立金

・将来的な働き方の変化

こうした支出も、住宅ローンと一緒に考えなければなりません。

家を買った後の生活まで含めて、住宅予算を考える。

これが「住まいの判断力」の大切なポイントです。

住宅ローンを組む前に考えたい「5つの前提条件」

住宅ローンを検討するとき、私は次の5つを確認してほしいと思っています。

① 現在の収入だけでなく、将来の収入も考える

今の収入が、この先も同じとは限りません。

転職、独立、退職、働き方の変更など、人生にはさまざまな変化があります。

「今払える」だけではなく、

「収入が変わっても返済を続けられるか」を考えます。

② 住宅費以外の生活費を削りすぎない

住宅ローンを優先するあまり、

「旅行に行けなくなった」

「子どもの習い事を諦めた」

「趣味にお金を使えなくなった」

となってしまったら、本末転倒です。

住まいは人生を豊かにするためのものであり、人生そのものではありません。

③ 住宅ローン以外の住居費も見る

住宅購入にはローン以外にもお金がかかります。

戸建てなら将来的な修繕費。

マンションなら管理費・修繕積立金・駐車場代など。

さらに固定資産税などもあります。

「毎月のローン返済額=住居費」ではない

という視点が重要です。

④ 金利上昇などのリスクも考える

変動金利を選択する場合には、金利が変動する可能性があります。

「今の返済額なら大丈夫」だけではなく、

返済額が変わった場合にも家計が耐えられるか

を確認しておきたいところです。

⑤ 「売ればいい」を最初から前提にしない

「将来売ればいいから、今は少し無理をしても大丈夫」

という考え方には注意が必要です。

不動産の価格は、将来必ず上がるとは限りません。

売却時の市場環境や物件の状態、立地、築年数などによって、結果は変わります。

住むために買うのか。

将来売却することも想定して買うのか。

目的を明確にすることが大切です。

「50年ローン」も、年数だけで良し悪しを決めない

長期の住宅ローンが注目される中で、

「50年ローンだから危険」

「月々の返済額が安いからお得」

と、期間だけで判断するのも適切ではありません。

重要なのは、

なぜ長期ローンを選ぶのか。

そして、そのローンをどう返していくのか。

ということです。

返済期間を長くすることで月々の負担を抑えられる一方、総返済額や将来の家計、定年後の返済なども考える必要があります。

また、

「最後まで返済することを前提にするのか」

「途中で売却する可能性があるのか」

という出口についても、購入前に考えておきたいところです。

「資産になる家」より先に「暮らし続けられる家」

最近は、

「資産価値が高い」

「値上がりする」

「将来売却できる」

といった情報も多く見かけます。

もちろん、資産性は住まい選びの重要な要素のひとつです。

しかし、

資産価値を優先するあまり、毎日の暮らしが苦しくなってしまったら?

それでは、住まいの目的から少し離れてしまうのではないでしょうか。

私は、

「資産になるか」だけではなく、

ここで自分らしく暮らせるか

を大切にしたいと思っています。

住宅ローンは「人生を縛るもの」ではなく「暮らしを支える手段」

住宅ローンを組むこと自体が、良い・悪いという話ではありません。

大切なのは、

住宅ローンを目的にしないこと。

家を買うことがゴールではなく、

その家で家族とどんな時間を過ごしたいのか。

どんな働き方をしたいのか。

どんな老後を迎えたいのか。

何にお金を使って人生を楽しみたいのか。

そこから逆算して、住宅予算を考えてほしいのです。

「住まいの判断力」とは、未来の自分を想像する力

住宅購入は、人生の中でも大きな選択です。

だからこそ、

「今、買えるか」

「いくら借りられるか」

「周りの人が買っているか」

だけで判断するのではなく、

この選択をした10年後、20年後の自分は幸せだろうか?

と考えてみてください。

住まいの正解は、誰かが決めてくれるものではありません。

市場にも、専門家にも、金融機関にも、それぞれの役割があります。

でも最後に、

「この暮らしを選びたい」

と決めるのは、自分自身です。

まとめ

住宅ローンを考えるときに大切なのは、

「いくら借りられるか」ではなく、

いくらなら無理なく暮らし続けられるか」。

そして、

「家を買うこと」ではなく、

「その家でどんな人生を送りたいのか」。

住宅ローンは、住むための手段です。

人生を豊かにするはずの住まいが、人生を苦しくするものにならないように。

数字だけではなく、自分の暮らしと未来から住宅ローンを考える。

それも、私が考える「住まいの判断力」のひとつです。

次回予告|Vol.5

「持ち家=安心」は本当?資産価値だけでは測れない、住まいの価値

次回は、住宅の「資産価値」と「暮らしの価値」をテーマに、

自分にとって本当に価値のある住まいとは何かを考えていきます。

「高く売れる家」=「良い家」なのか?

それとも、別の価値があるのか。

住まい選びを「お金」だけで考えないための、次の判断軸をお届けします。

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