
2025年7月1日、国税庁から「路線価(ろせんか)」が発表されました。
「なんだか専門的な話…」と思われるかもしれませんが、実はこの数字、相続税や贈与税、さらには家賃や生活コストにも関わる大切な指標なんです。
今回は、宅地建物取引士の立場から、「路線価とはなにか?」「なぜ上がっているのか?」「暮らしにどう関係するのか?」を、やさしく丁寧にお伝えしていきます。
路線価ってなに?地価公示価格との違いは?

まず「路線価」とは、道路に面した土地1㎡あたりの価格を、税金の計算用に決めたものです。
国税庁が毎年7月に発表し、相続税や贈与税などを計算する際の基準になります。
ここでよく混同されるのが「地価公示価格(ちかこうじかかく)」。こちらは国土交通省が毎年3月に発表するもので、**実際の不動産取引の参考になる“市場価格”**です。
両者の違いは次のとおり:
種類 | 用途 | 価格の目安 |
---|---|---|
地価公示価格 | 不動産売買の目安 | 実勢価格(100%) |
路線価 | 税金(相続・贈与)の計算用 | 地価公示価格の約80% |
つまり、路線価は「税金を決める価格」、**地価公示価格は「市場での目安価格」**と覚えておくとよいでしょう。
2025年、全国平均+2.7%の上昇!

今年の路線価は、全国平均で前年比**+2.7%**の上昇。これは2010年以降で最大の伸びです。とくに上昇が目立ったのは…
- 東京都:+8.1%(全国トップ)
- 長野県白馬村:+32.4%(全国最大)
- 北海道富良野市:+30.2%
- 台東区浅草・雷門通り:+29.0%
これらは、観光再開・インバウンド需要・再開発が進んでいるエリア。
不動産の評価額が上がるということは、資産価値としてはプラスです。
でも…いいことばかりじゃない?

土地の評価額が上がることは、「資産価値が上がった」と捉えられる一方で、注意すべき点もあります。
① 相続税や贈与税が増える
路線価の上昇は、そのまま相続税・贈与税の計算額アップにつながります。
都心や人気観光地では、前年より数百万円単位で評価額が増えるケースも。
② 固定資産税などの保有コストも増える
固定資産税は「固定資産税評価額」に基づいて算出されます。
この評価額は、3年に1度見直され、地価公示価格や路線価の動向を反映します。
つまり、路線価の上昇が続けば、将来的に税負担が増える可能性があるということです。
賃貸暮らしの方も、実は“他人事”ではありません

「土地も家も持っていないから関係ない」と思っていませんか?
実は、固定資産税の上昇は“家賃”にも影響することがあるのです。
オーナー(大家さん)は、固定資産税や修繕費などの経費を家賃収入でまかなっています。
そのため、土地の評価額や保有コストが増えると、将来的に家賃が値上がりする可能性があるのです。
特に、人気エリアや観光地、再開発地域などでは、数年以内に家賃が見直されるケースも出てくるかもしれません。
“暮らしとのズレ”が生まれることも

近年の不動産価格や評価額の上昇は、インフレや外資の投資も背景にあります。
しかし、私たちの給与や生活水準が、それと同じスピードで上がっているわけではありません。
この“土地の価値”と“実際の生活”の間にズレが生まれると、
- 住み慣れたエリアに住み続けられない
- 相続税が払えず、実家を手放す
- 税金や家賃がじわじわ家計を圧迫する
といったことが現実に起きてきます。
今からできる「5つの備え」
❶ 路線価を調べてみる
→ 国税庁の「路線価図」で、住所を入力するとすぐに確認できます。
❷ 固定資産税の通知書を見直す
→ 評価額の推移や、税額の変化を見てみましょう。
❸ 相続・贈与のシミュレーションをしてみる
→ 家族で情報を共有し、早めに方針を考えるのが◎。
❹ 賃貸の方も家賃相場を定期的にチェック
→ 将来の引っ越しや住み替えの目安にも。
❺ プロに相談する
→ 宅建士・税理士・ファイナンシャルプランナーなどに早めに相談しておくと安心です。
最後に:数字の先にある「暮らし」を大切に
「路線価」と聞くと、むずかしそうな言葉に感じるかもしれません。
でもこれは、土地を持っている人だけでなく、賃貸で暮らす人にも関係する“家計のバロメーター”。
税金や家賃、そして将来の住まいにまで影響するこの数字を、
ぜひ一度、“自分ごと”として見つめてみてください。
そして、不安なことがあれば、どうぞ専門家を頼ってください。
私たち宅建士は、難しい不動産の話を“暮らしの言葉”に変換する「通訳」のような存在です。

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