「支払う=損?価格重視に囚われる日本社会と宅建士が伝えたい価値の考え方」

宅地建物取引士が解説。家賃や仲介手数料は本当に無駄なのか?ダブルスタンダードの心理と、価値ある支払いの考え方。

お金を支払うとき、あなたはどう感じますか?
「家賃が高い」「仲介手数料がもったいない」と思ったことはありませんか。
現代社会では、支出=損という感覚に囚われる人が増えています。しかし本当に大切なのは、価格ではなく支払うことで得られる価値です。

日本は長くデフレや価格競争の影響を受け、安さばかりを追い求める傾向が強くなっています。その結果、安心・安全・快適さといった本質的な価値を見落とし、暮らしや社会全体の質が損なわれかねません。

今回は、宅建士の視点から、「支払う=損」と考える心理の落とし穴と、家賃・仲介手数料を含むお金の価値について考えてみたいと思います。

1. ダブルスタンダードの心理

現代人は、自分の労働には正当な報酬を求める一方、他人の労働には「安くて当然」と考える傾向があります。心理学ではこれを**ダブルスタンダード(双基準)**と呼びます。

日本では長年のデフレや価格競争が影響し、消費者は「少しでも安く買う」ことを当然と考えがちです。その結果、給料に不満を抱きつつ、支出の際には安さだけを優先するという矛盾した行動が生まれています。これは個人の心理だけでなく、社会全体の価値観の歪みでもあります。

2. 価値より価格を重視する日本の未来

価格重視の考え方が広がると、サービスやプロフェッショナルの価値は低く見積もられ、賃金や品質の停滞につながります。

  • 安いことだけに注目して、安全性や安心を軽視する
  • プロの責任や専門性を過小評価する

このままでは、安心で快適な暮らしを維持する力が社会全体で弱まり、次世代に受け継がれる価値も損なわれかねません。私たちの暮らしの質は、価格ではなく価値を正しく理解する力にかかっているのです。

3. 家賃や賃貸についての考え方

家賃を「損」と感じる人は少なくありません。しかし、家賃は単なるオーナーのローン返済ではありません。

  • 安全な住環境
  • 建物の管理・修繕
  • 緊急対応や清掃などのサービス
  • 生活基盤の安定

これらすべてが家賃に含まれており、支払うことで安心と快適さを得られる対価です。価格だけで判断するのではなく、得られる価値を意識することが大切です。

4. 仲介手数料について

仲介手数料は、賃貸でも売買でも同じです。宅地建物取引士は、単に物件を紹介するだけではありません。また仲介手数料は法律で定められている報酬です。

  • 契約の安全性を守る
  • 法律上の責任を負う
  • トラブルやリスクを未然に防ぐ
  • 買主・借主・売主・貸主双方の利益を守る

これらすべての責任専門性が、仲介手数料に反映されています。価格だけで手数料を「高い」と判断するのは、安心な取引を手放すことにつながります。

5. 支払いを価値として捉える

「支払う=損」という感覚は、短期的な視点に囚われているから生まれます。
家賃や仲介手数料は、安心・安全・快適な暮らしを手に入れるための投資です。支払う先にある価値を理解することで、心の余裕も生まれます。

6. 未来に向けて

価格重視に囚われたままでは、社会全体の質も、自分の暮らしの質も下がってしまいます。しかし、私たち一人ひとりが価値を意識して支払いを判断する力を持てば、安心な暮らしと質の高い社会を守ることができます。

宅建士として伝えたいのは、支払うお金を「損」と考える前に、その先にある安心・安全・快適さの価値を理解することの大切さです。価値を意識する一歩を踏み出すことで、日本の未来も、私たちの暮らしも、より豊かで前向きなものになるはずです。

【賃貸トラブル最前線】借主の“カスハラ”が増加中!善管注意義務違反と、過剰な借主保護が生む日本の賃貸リスクとは?

“普通の要望”が“カスハラ”に変わる瞬間とは?善管注意義務を無視した実例と、借家法の過剰保護でこじれる賃貸トラブルの現実。一歩先の防衛知識を解説。

近年、賃貸管理の現場で急増しているのが 「借主によるカスタマーハラスメント(カスハラ)」 です。
「お客様は神様だ」という誤った認識を盾に、過度な要求・理不尽なクレーム・虚偽申告を行う借主は、管理会社とオーナーの大きな負担になっています。

しかもこの問題、背景には 善管注意義務への理解不足 と、
借主保護が非常に強い日本の借家法(借地借家法) の存在があります。

「借主カスハラ」「賃貸不当要求」「善管注意義務違反」に悩む管理会社・オーナーが、今まさに直面する“構造的な課題”を、わかりやすく解説します。

増え続ける「借主カスハラ」

善管注意義務を無視した不当要求の実態〜**

賃借人には民法400条に基づき、
「善良な管理者として注意して使用する義務(善管注意義務)」
があります。

つまり、本来は
自分の持ち物以上に丁寧に使うことが前提。

しかし現場では、以下のような 明らかな善管注意義務違反 が、借主の“当然の権利”のように主張されることが増えています。

■実際に多い「借主カスハラ」事例

  • 異物を流してトイレ詰まり→無料修理を強要
  • 結露・カビを放置→建物の欠陥と決めつける
  • 排水口の清掃不足で詰まり→高圧洗浄を無料で要求
  • 経年劣化ではない破損→新品交換を求める
  • 過失があっても「管理会社の責任」と虚偽の主張

管理会社は説明しても感情的に責められ、
「波風を立てるくらいなら無料で処理しよう…」と負担を抱え込んでしまう構図ができています。

借主カスハラを生み出す“制度的原因”

〜借家法の借主保護が過剰になっていないか?〜**

借主保護は大切ですが、現在の制度は 戦後の住宅不足の時代に作られたもの がベースです。
2020年代の賃貸市場には合わない部分も多く、以下のような“借主優位の歪み”を生んでいます。

(1)契約更新は借主が圧倒的に強い「正当事由制度」

貸主が更新拒絶・解約をするには、
非常に強い理由+立退料 が必要。

→ 借主は「追い出されない」という安心感が過度に強くなる。
→ 結果、態度がエスカレートしやすい。


(2)修繕義務の誤解が不当要求を助長

民法606条の「貸主は必要な修繕義務を負う」という条文が曲解され、

「修理は全部オーナーの義務でしょ?」

という認識が広がりがち。

しかし実際は、
借主の過失・善管注意義務違反は借主負担 が原則。

この違いが理解されていないことが、
不当要求の大きな原因になっています。

(3)原状回復ガイドラインの“誤用”

国交省ガイドラインは法令ではなく“参考基準”なのに、
「クロスの張替えは全て貸主負担」と誤解する借主が多い。

SNSの誤情報も拍車をかけています。

(4)管理会社側の権利が制度的に弱い

借主からのクレームが過剰であっても、
借主保護規定が強く、
“強く出られない”ためカスハラが助長される。


歪んだバランスのままでは、賃貸市場が持続できない

築古物件の増加、修繕費の高騰、管理人材の不足…。
賃貸経営は年々難しくなっています。

そこに 借主カスハラの増加 が重なれば、
小規模オーナーや管理会社は疲弊し、
賃貸市場全体の健全性が損なわれかねません。

これから必要なのは

“借主保護だけでなく、貸主・管理会社の保護” も両立させること**

■今後見直しを検討すべき点

  • 善管注意義務違反の明確化とペナルティ
  • 悪質クレーム(カスハラ)への法的対処の整備
  • 過失・故意の原状回復基準をより明文化
  • 管理会社スタッフを守る仕組みの構築
  • 正当事由制度の現代化
  • 契約書の標準化(修繕・費用負担の明確化

借主の安心を守りながら、貸主・管理会社も守られる制度設計こそ、
持続可能な賃貸市場には欠かせません。

まとめ

借主は“神様”ではない。
賃貸契約は「対等な契約関係」です。**

賃貸トラブルの多くは、
借主が“守られて当然”と感じる構造的な背景から生まれます。

しかし、賃貸借契約は
借主・貸主が互いに義務を果たして成り立つ“対等な契約” です。

健全な賃貸市場を守るには、
過度な借主保護と不当要求(カスハラ)が引き起こす課題を直視し、
制度も運用も“現代に合わせてバランスを取り戻す”必要があります。

筆者プロフィール

今西千登瀬(いまにし ちとせ)
インテリアコーディネーター・子育て住空間コンサルタント。
40代女性の「心とからだ、暮らしにやさしいライフスタイル」をテーマに、住宅・不動産・ライフスタイル領域でコラムを執筆中。

異常な価格高騰が生む「東京マンション市場のゆがみ」──転売規制が示す新たな局面

なぜ都心マンションはこんなに高くなったのか?転売禁止や外国人投資家の滞納問題など、今の住宅市場に潜む“異常事態”を宅建士がわかりやすく解説します。

― 千代田区の転売禁止要請、月島の通達、そして外国人投資家による管理費滞納。

住宅が“暮らし”ではなく“投資商品”になりつつある現状を読み解く ―

■ マンション価格が「異常値」に達した東京の現状

近年、東京都心のマンション価格は、まさに“異常”といえるほどの高騰を見せています。70㎡で1億円を超える物件も珍しくなく、共働き世帯でも手が届きにくい価格帯が常態化。
いまや住宅が「生活のための場所」ではなく、「投資の対象」として扱われるケースが増えています。

とくに都心部では、外国人投資家による買い占めも進み、
抽選販売の新築マンションが発売と同時に“即完”する現象も起きています。

■ 千代田区「5年間転売禁止特約」の要請

2025年7月、千代田区は区内の分譲マンション事業者に対し、
「契約から5年間は転売を禁止する特約を設けるように」と正式に要請しました。
これは、投資目的の短期転売(いわゆる“フリップ”)を防ぎ、
真に居住を希望する人々が住宅を確保できるようにするためのものです。

このような“転売規制”を行政が打ち出すのは極めて異例。
それだけ、市場の過熱が深刻な段階に達していることの表れです。

■ 三井不動産「月島プロジェクト」での手付金没収通達

同じく2025年、三井不動産レジデンシャルが手がける月島の大型マンション「セントラルガーデン月島」では、「転売目的で購入したと判断された場合、手付金を没収する」との通達が話題となりました。
デベロッパー自らが“転売抑制”に踏み込む姿勢を見せた点で、業界内でも注目を集めています。

こうした背景には、抽選販売を利用して転売差益を得ようとする「フラッパー」行為が後を絶たないことがあります。
一見すると市場が活況に見えても、実需(実際に住む人)が置き去りにされている現状が浮き彫りです。

■ 晴海フラッグ、そして外国人オーナー問題

晴海フラッグをはじめとする都心部の人気タワーマンションでは、
外国人投資家による一括購入・転売・賃貸化が相次ぎました。
その結果、居住者の入れ替わりが激しく、
管理組合の運営や修繕積立金の徴収に支障をきたす事例が増えています。
ネットニュースでは、外国人オーナーによる「管理費滞納」や「連絡不通」などの問題が報じられ、
共同住宅としての健全な維持管理が難しくなっている現状が明らかになりました。

■ 投機化がもたらす“ゆがみ”と今後のリスク

短期転売や不在オーナーの増加は、
本来あるべき「コミュニティ型の居住文化」を損なうだけでなく、
修繕積立金の不足による資産価値の低下を招きます。
また、金利上昇や景気変動により投資目的の売却が一斉に起これば、
価格の急落という二次的なリスクも考えられます。

つまり、投資としての不動産が増えることは、
市場全体を不安定にする“ゆがみ”を内包しているのです。

■ 宅地建物取引士としての見解

宅地建物取引士として現場を見ていて強く感じるのは、
「不動産が資産である前に、まず“暮らしの器”であるべき」という原点です。

住まいを“転売益を狙う対象”として見るか、
“生活の基盤”として大切にするか。
その違いが、数年後のマンションの価値を大きく左右します。

これから住宅を購入する方に伝えたいのは、
「資産性」だけでなく「居住性」「管理」「地域性」といった
“住まいとしての持続力”をしっかり見極めること。
短期的な値上がりよりも、長く安心して住めることこそが真の価値です。

■ まとめ ― 見直されるべき“住まいの本質”

転売禁止の動き、手付金没収の通達、外国人オーナー問題。
これらはすべて、東京の不動産市場が今「転換期」にあることを示しています。

住宅の本質は、投機ではなく“暮らし”。
この当たり前の価値観を、もう一度見つめ直す時期に来ているのではないでしょうか。

■執筆者プロフィール

今西千登瀬(いまにし ちとせ)
インテリアコーディネーター・子育て住空間コンサルタント。
40代女性の「心とからだ、暮らしにやさしいライフスタイル」をテーマに、住宅・不動産・ライフスタイル領域でコラムを執筆中。

不動産取引を悪用するマネーロンダリングの実態と対策

海外送金や仮想通貨による不動産購入を装い、資金洗浄(マネーロンダリング)を行う手口が増加しています。
不動産業界では取引時確認の厳格化が進むなか、一般の消費者も「巻き込まれないための知識」が求められています。

―― 安心・安全な不動産取引のために知っておきたいポイント

こんにちは。インテリアコーディネーター・宅地建物取引士の今西千登瀬です。
ここ数年、全国の不動産業界では「外国籍の購入希望者」や「仮想通貨による支払い希望者」など、
一見すると通常の取引のように見えて、実はマネーロンダリング(資金洗浄)目的の可能性がある案件が増えています。

今回は、不動産を悪用したマネーロンダリングの実態と、私たち消費者ができる防止策をわかりやすく解説します。

■ なぜ不動産がマネーロンダリングに利用されるのか

マネーロンダリングとは、犯罪や不正取引によって得た資金の出所を隠し、
「正当な資金」に見せかける行為を指します。

その中でも不動産は、

  • 高額な取引であっても社会的に「自然」に見える
  • 資産価値が安定しており、換金もしやすい
    という特性から、資金洗浄の最終段階として悪用されやすいといわれています。

とくに近年では、
「海外からの送金で不動産を購入したい」
「仮想通貨(USDTなど)で支払いできないか」
「円に両替できる人を紹介してほしい」
といった問い合わせを装って、資金の流れを隠そうとするケースも見られます。


■ 宅建業者に義務付けられている「取引時確認」

不動産業者には、**犯罪による収益の移転防止法(犯収法)**に基づく「取引時確認」が義務付けられています。
具体的には次のような手続きが求められます。

  • 本人確認(パスポート・運転免許証・在留カードなど)
  • 取引目的の確認(居住用・投資用・事業用など)
  • 資金の出所・送金経路の確認
  • 実質的支配者(最終的に利益を得る人物)の特定

これらの確認を怠った場合、業者は行政処分や罰則の対象となるため、
信頼できる不動産会社では、丁寧なヒアリングと書類確認を徹底しています。


■ 実際に報告されている手口とは?

ここ数年の間に、業界団体や警視庁などが注意喚起している主な手口は次のとおりです。

  • 海外口座からの多額送金を複数名義で分割して行う
  • 仮想通貨を現金化するための不動産取引を持ちかける
  • 法人名義で購入し、最終的な所有者を隠す
  • 短期間で売買を繰り返し、価格を吊り上げることで資金を「合法化」する

いずれのケースも、最初はごく普通の購入相談や賃貸申し込みから始まることが多く、
取引を進めるうちに「何かおかしい」と気づくパターンが増えています。

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■ 一般の購入者・売主が注意すべきポイント

マネーロンダリングというと、自分には関係ないと思われがちですが、
知らぬ間に巻き込まれてしまうケースもあります。

安全な取引のために、以下の点に注意しておきましょう。

  • 「両替してくれる人を紹介して」など、不自然な依頼を受けたら応じない
  • 契約や送金に関して、不明点があれば必ず宅建士に相談する
  • 契約書の名義人と実際の入金者が異なる場合は慎重に確認する
  • SNSやメッセージアプリ経由の取引勧誘には応じない

■ 不動産業者の責任と私たちの心構え

不動産業者にとっても、疑わしい取引を断る勇気が必要です。
短期的な利益よりも、地域と顧客の信頼を守ることが何より大切です。

また、一般の消費者も「資金の出所をきちんと説明できる」「契約の透明性を意識する」ことで、犯罪防止の一端を担うことができます。


■ まとめ ― 安心できる住まい探しのために

不動産は人生の基盤であり、大切な資産です。
だからこそ、取引の透明性と安全性を守ることが欠かせません。

「少しでも不自然だな」と感じたら、その直感を大切にし、
信頼できる宅建士や専門機関に相談しましょう。

安心できる不動産取引は、正しい知識と冷静な判断から始まります。


✳️執筆:今西千登瀬(インテリアコーディネーター/宅地建物取引士)

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