相続登記を確実に行うための7ステップ

~具体例で学ぶスムーズな相続のためのステップ~

1. はじめに

親や配偶者が亡くなったあと、残された不動産をどう引き継ぐのか。
人生の中で不動産相続を経験する機会は限られているため、「何から始めればいいかわからない」と戸惑う方も多いはずです。
このコラムでは、不動産相続の基本的な流れを、実際のケースや関連法令を交えながら、初心者にもわかりやすく解説します。


2. 不動産相続の基本的な流れ

【STEP1】相続が開始する

相続は「被相続人(亡くなった人)の死亡」により開始します(民法第882条)。

【STEP2】相続人の確認

誰が相続人になるかを確認します。
配偶者は常に相続人で、その他は以下の優先順位で決まります。

  • 第1順位:子(子が死亡している場合は孫)
  • 第2順位:父母・祖父母などの直系尊属
  • 第3順位:兄弟姉妹(兄弟が死亡している場合はその子)

※戸籍をたどって相続人を確定するため「法定相続情報一覧図」の取得が推奨されます。

【STEP3】遺言書の有無を確認

遺言書があれば、法定相続分よりも遺言が優先されます(民法第902条)。
自筆証書遺言は家庭裁判所で「検認」手続きが必要(民法第1004条)。

【STEP4】相続財産の把握と評価

対象となる不動産や預金、借金などの資産・負債をすべて洗い出します。
不動産については「固定資産税評価証明書」「登記簿謄本」「公図」などで確認。
必要に応じて不動産鑑定士による評価を行う場合もあります。

【STEP5】相続方法の選択

相続には以下の3つの方法があります(民法第915条)。

  • 単純承認:すべての財産・債務を引き継ぐ
  • 限定承認:資産の範囲内で債務を引き継ぐ
  • 相続放棄:一切相続しない

※相続放棄や限定承認は「相続開始を知った日から3ヶ月以内」に家庭裁判所に申述する必要があります。

【STEP6】遺産分割協議

法定相続人全員で遺産分割方法を話し合います。
分割内容が決まったら「遺産分割協議書」を作成し、署名・実印押印し印鑑証明書を添付。

【STEP7】不動産の相続登記(名義変更)

法務局で「相続登記」を行い、不動産の名義を相続人に変更します。
2024年4月以降、相続登記は「義務化」され、**3年以内に登記しないと過料(10万円以下)**が科される可能性があります(不動産登記法第76条の2)。


3. 具体的なケーススタディ

【ケース】父が亡くなり、自宅を長男が相続した場合

  • 家族構成:父、母、長男、長女(全員健在)
  • 遺言書:なし
  • 不動産:父名義の自宅(土地・建物)

【対応の流れ】

  1. 相続人を確認(母・長男・長女)
  2. 自宅の評価額を確認(例:固定資産評価額2,500万円)
  3. 遺産分割協議で「長男が自宅を相続、母と長女に代償金を支払う」で合意
  4. 遺産分割協議書を作成し、相続登記を申請
  5. 相続税の申告(必要に応じて)を税理士に依頼

4. 相続税の基礎知識

相続税とは、相続や遺贈によって財産を受け取った人が支払う税金です。

■相続税がかかるかどうかの判断

相続税には「基礎控除」があり、以下の式で算出します。

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

たとえば、相続人が配偶者・長男・長女の3人なら
3,000万円 + 600万円×3 = 4,800万円が非課税枠になります。

遺産総額がこの金額を超える場合にのみ、相続税の申告・納税が必要です。

■不動産の評価額

現金と異なり、不動産は市場価格ではなく「相続税評価額(路線価方式・倍率方式)」で算出されるため、実際の売却価格よりも低く評価されることが多いです。
この評価により、相続税がかかるかどうかが大きく変わります。

■配偶者の税額軽減

配偶者は、1億6,000万円または法定相続分のどちらか多い方まで非課税になる特例があります。


5. 相続放棄とは?

■相続放棄の概要

借金や債務が多い場合などに、「相続を一切受け取らない」という選択肢が相続放棄です。
民法第938条に基づき、相続開始を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に申述書を提出する必要があります。

■相続放棄の注意点

  • 一度放棄すると撤回できません
  • 相続人でなくなった扱いになるため、不動産の管理や売却もできません
  • 第2順位・第3順位の相続人に権利が移るため、親族内で調整が必要

■放棄した方が良いケース

  • 不動産より借金や保証債務の方が多い
  • 管理不能な空き家や廃墟物件が含まれている
  • 親族関係が複雑でトラブル回避を優先したいとき

6. 相続でよくあるトラブルと対処法

  • 相続人間の意見がまとまらない
     →弁護士や司法書士を交えた調整を検討
  • 不動産を複数人で共有すると後で売却が難しくなる
     →1人が相続し、他の相続人へ代償金を払う方法が有効
  • 被相続人の借金が発覚
     →限定承認または相続放棄を早めに判断

7. 相続はタブーではない。「生前の話し合い」が円満相続の鍵

相続にまつわる話題は、どうしても「縁起でもない」「言い出しにくい」と避けられがちです。
しかし、本当に揉めるのは“亡くなったあとに何も決まっていないケース”。遺された家族が、不動産や預金の分け方をめぐって争う…というのは決して珍しい話ではありません。

そのリスクを避けるためにも、相続については生前のうちに家族で率直に話し合うことがとても大切です。

◆ 話し合っておきたいポイント

  • どの不動産を誰に相続してほしいか
  • 自宅に住み続けたい人がいるか
  • 借金やローンは残っているか
  • 介護や看病への感謝の気持ちをどう反映させたいか
  • 遺言書は作成済みか?どこに保管されているか?

◆ 生前対策でできること

  • 公正証書遺言の作成
  • 不動産の名義や評価額の確認
  • 家族信託の活用
  • 相続税の試算と対策

どんなに仲の良い家族でも、「お金と不動産」の話は、感情が絡むとトラブルになりがちです。
だからこそ、“今”がチャンスです。
「うちも、そろそろ話し合っておこうか」――その一言が、将来の安心と信頼につながります。

8. まとめ

不動産の相続は、亡くなった方の意志を大切にしながら、相続人全員が納得できる形で進めることが理想です。また生前に本人と家族で話し合って明確にしておくことでトラブルを回避できます。また相続登記の義務化など制度の変更もあるため、司法書士や税理士など専門家への早めの相談が安心につながります。


■関連法令一覧

  • 民法 第882条(相続開始)
  • 民法 第915条(相続の承認・放棄)
  • 民法 第938条(相続放棄)
  • 不動産登記法 第76条の2(相続登記の義務化)
  • 相続税法 第15条~(相続税の課税)

借地権付き住宅のトラブル事例と対処法

借地権付き住宅はコストを抑える一方で、地主との関係が重要であり、トラブルが発生する可能性があります。契約更新の拒否、建て替えの拒否、地代の急増、売却困難などの事例に対する法的対処法を理解し、専門家に相談することがなにより重要です。

〜借地借家法を正しく知って、不安なく借地に暮らすために〜


◆ 借地権付き住宅、実はこんなトラブルが起こることも…

土地を借りて家を建てる「借地権付き住宅」。購入費用を抑えられる魅力がある一方で、土地の所有者(地主)との関係性が大きなカギとなるため、トラブルが起こるケースも少なくありません。

以下では、実際に起こりやすいトラブルの事例と、それに対する法的な対応策をご紹介します。


【トラブル事例①】借地契約の更新を拒否された

● 事例:

建物が老朽化し、建て替えを検討していたところ、地主から「契約更新はしない」と通告される。借地期間は旧法の借地契約(30年)で、更新時期が近づいていた。

● 対処法:

旧借地法(平成4年以前)に基づく借地契約は、借主が非常に強く保護されています。
地主が更新拒否をするには、「正当事由」が必要です。

【旧借地法第6条】
借地権の更新を拒絶しようとする場合には、正当の事由がなければならない。

この「正当事由」には、地主が自らの居住用に土地を必要とする場合など、相当な理由が必要であり、単に「更新したくない」という理由では拒否できません。

💡【対処ポイント】
→ 弁護士に相談し、借主の「継続使用の意志」と「更新の必要性」を主張。場合によっては裁判で保護されることも。


【トラブル事例②】建て替え・増築を地主に拒否された

● 事例:

借地上に建てた住宅が古くなり、建て替えをしたいと申し出たところ、「建て替えは認めない」と言われてしまった。

● 対処法:

建て替えは原則として地主の承諾が必要です。ただし、借地権契約に「建て替え承諾条項」がある場合や、裁判所に**「建替え承諾に代わる許可(借地借家法第17条)」**を申し立てることも可能です。

【借地借家法第17条第1項】
借地権者が建物の建替えのために土地の使用を継続する必要がある場合で、正当の理由があるときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、地主の承諾に代わる許可を与えることができる。

💡【対処ポイント】
→ 地主と交渉が難航した場合、建替え理由・建築計画などを整理して裁判所に申立てを。


【トラブル事例③】地代の増額を突然請求された

● 事例:

これまで月2万円で支払っていた地代を、地主が突然「相場に合わせて3万円にする」と通知。納得できないが、契約書には「将来協議の上改定あり」と書かれていた。

● 対処法:

地代は周辺相場・物価などに応じて変更が可能ですが、地主の一方的な値上げ要求には正当性が求められます。

【借地借家法第11条】
地代の額が、土地の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動により不相当となったときは、当事者は将来に向かって地代の額の変更を請求することができる。

💡【対処ポイント】
→ 「不相当」とされる根拠(地価・近隣相場・契約履歴など)を確認。
→ 交渉が折り合わなければ、調停や裁判による判断を仰ぐことも可能。


【トラブル事例④】借地権付き住宅が売却できない

● 事例:

高齢の親から相続した借地権付き住宅を売却しようとしたところ、「地主の承諾が必要」「名義変更料がかかる」「そもそも買い手が見つからない」など障壁が多く、なかなか売れない。

● 対処法:

借地権付き建物の売却には、地主の承諾と譲渡承諾料の支払いが必要なケースが多いです。これは借地権が地主の土地に強く結びついているためです。

【借地借家法第19条】
借地権の譲渡について、地主が正当な理由なく承諾を拒否することはできない。

💡【対処ポイント】
→ 売却前に地主との関係性を良好に保っておくことが重要
→ 不動産会社選びも「借地権売却に強い」会社を選ぶのが成功のカギ。


【トラブル事例⑤】借地権付き住宅を親から相続したが、地主と揉めてしまった

● 事例:

父が長年住んでいた借地権付き住宅を相続したが、地主から「借地人が変わるなら契約を終了させる」と言われた。さらに、建物の名義変更や借地権の承諾料について高額な費用を請求され困惑している。

● よくある悩み:

  • 名義変更って必ず必要なの?
  • 地主に更新料や承諾料を支払う必要は?
  • そもそも相続した建物はどう活用すべき?

● 法的ポイントと対処法:

【借地権の相続は「当然承継」】

借地権は、相続によって当然に引き継がれる権利です。地主の承諾がなくても、法的には借地契約が終了することはありません。

【借地借家法 第19条】
借地権の譲渡または建物の賃貸について、地主が正当な理由なく承諾を拒むことはできない。

※相続は譲渡ではなく「承継」に該当するため、承諾は不要とされるのが通例。

💡地主が「相続人が借主になるなら契約解除」などと主張するのは法的に認められないケースが大半です。


● 注意点:

ただし、相続後に以下のような手続きは必要・推奨されます。

内容必要性備考
建物の相続登記(名義変更)必須2024年4月以降、相続登記は義務化されています。
地主への通知任意だが推奨トラブル回避のためにも「誰が相続したか」は伝えておくと安心。
借地権更新料・承諾料の支払いケースバイケース相続時に更新料などの支払いを求められたら、契約内容と過去の慣例を確認。高額請求には注意。

● 相続後の選択肢:

  1. そのまま住み続ける(地代を払い続ける)
  2. 第三者に売却する(地主の譲渡承諾が必要)
  3. 更地にして返還・返還交渉をする(定期借地権の場合など)

● 売却時の注意点:

借地権付き住宅を売るには、地主の**「譲渡承諾」**が必要であり、**譲渡承諾料(目安:土地価格の5〜10%)**を請求されることもあります。

【借地借家法 第19条(再掲)】
地主は、譲渡について正当な理由がなければ拒否できない。

💡地主との関係が悪化している場合は、不動産業者や弁護士を介して交渉するのが得策です。


◆ まとめ:相続した借地権住宅、「知らないと損する」ことも

借地権付き住宅の相続は、法律上はスムーズでも、実務的には地主との関係性・契約内容に左右される部分が大きいです。

✔ 名義変更や登記義務を怠らない
✔ 地主への説明や交渉は冷静に対応
✔ トラブル時は専門家の助けを借りる

を徹底することで、大きなトラブルを防ぐことができます。


◆ 借地権トラブルを防ぐためのチェックリスト

✅ 借地契約書の内容を確認(契約期間/更新条項/譲渡条件)
✅ 借地の種類は?(旧法・一般借地・定期借地)
✅ 地主との信頼関係を維持する努力
✅ 専門家に早めに相談(司法書士・弁護士・不動産会社)


【参考法令まとめ】

  • 借地借家法 第6条(契約更新の正当事由)
  • 借地借家法 第11条(地代の増減請求)
  • 借地借家法 第17条(建て替え承諾に代わる許可)
  • 借地借家法 第19条(譲渡・転貸・相続に関する規定)
  • 不動産登記法 第76条(相続登記の義務)

◆ まとめ:借地権は「正しく理解」すれば怖くない

借地権には所有権住宅にないコストや手間もありますが、法的保護はしっかり整備されています
特に旧法借地権や長期の一般借地権では、地主の都合で一方的に立ち退きを迫られるようなことはありません。

トラブルが起こった場合も、借地借家法などの法的根拠をもとに冷静に対処することが重要です。


◆ トラブル回避のためにできること

  • 契約前に内容を必ず書面で確認
  • 地主との関係性は「信頼第一」コミュニケーションをこまめにとっておくことが大切。
  • 不明点は司法書士や弁護士、不動産の専門家に早めに相談
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