借地権付き住宅のトラブル事例と対処法

借地権付き住宅はコストを抑える一方で、地主との関係が重要であり、トラブルが発生する可能性があります。契約更新の拒否、建て替えの拒否、地代の急増、売却困難などの事例に対する法的対処法を理解し、専門家に相談することがなにより重要です。

〜借地借家法を正しく知って、不安なく借地に暮らすために〜


◆ 借地権付き住宅、実はこんなトラブルが起こることも…

土地を借りて家を建てる「借地権付き住宅」。購入費用を抑えられる魅力がある一方で、土地の所有者(地主)との関係性が大きなカギとなるため、トラブルが起こるケースも少なくありません。

以下では、実際に起こりやすいトラブルの事例と、それに対する法的な対応策をご紹介します。


【トラブル事例①】借地契約の更新を拒否された

● 事例:

建物が老朽化し、建て替えを検討していたところ、地主から「契約更新はしない」と通告される。借地期間は旧法の借地契約(30年)で、更新時期が近づいていた。

● 対処法:

旧借地法(平成4年以前)に基づく借地契約は、借主が非常に強く保護されています。
地主が更新拒否をするには、「正当事由」が必要です。

【旧借地法第6条】
借地権の更新を拒絶しようとする場合には、正当の事由がなければならない。

この「正当事由」には、地主が自らの居住用に土地を必要とする場合など、相当な理由が必要であり、単に「更新したくない」という理由では拒否できません。

💡【対処ポイント】
→ 弁護士に相談し、借主の「継続使用の意志」と「更新の必要性」を主張。場合によっては裁判で保護されることも。


【トラブル事例②】建て替え・増築を地主に拒否された

● 事例:

借地上に建てた住宅が古くなり、建て替えをしたいと申し出たところ、「建て替えは認めない」と言われてしまった。

● 対処法:

建て替えは原則として地主の承諾が必要です。ただし、借地権契約に「建て替え承諾条項」がある場合や、裁判所に**「建替え承諾に代わる許可(借地借家法第17条)」**を申し立てることも可能です。

【借地借家法第17条第1項】
借地権者が建物の建替えのために土地の使用を継続する必要がある場合で、正当の理由があるときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、地主の承諾に代わる許可を与えることができる。

💡【対処ポイント】
→ 地主と交渉が難航した場合、建替え理由・建築計画などを整理して裁判所に申立てを。


【トラブル事例③】地代の増額を突然請求された

● 事例:

これまで月2万円で支払っていた地代を、地主が突然「相場に合わせて3万円にする」と通知。納得できないが、契約書には「将来協議の上改定あり」と書かれていた。

● 対処法:

地代は周辺相場・物価などに応じて変更が可能ですが、地主の一方的な値上げ要求には正当性が求められます。

【借地借家法第11条】
地代の額が、土地の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動により不相当となったときは、当事者は将来に向かって地代の額の変更を請求することができる。

💡【対処ポイント】
→ 「不相当」とされる根拠(地価・近隣相場・契約履歴など)を確認。
→ 交渉が折り合わなければ、調停や裁判による判断を仰ぐことも可能。


【トラブル事例④】借地権付き住宅が売却できない

● 事例:

高齢の親から相続した借地権付き住宅を売却しようとしたところ、「地主の承諾が必要」「名義変更料がかかる」「そもそも買い手が見つからない」など障壁が多く、なかなか売れない。

● 対処法:

借地権付き建物の売却には、地主の承諾と譲渡承諾料の支払いが必要なケースが多いです。これは借地権が地主の土地に強く結びついているためです。

【借地借家法第19条】
借地権の譲渡について、地主が正当な理由なく承諾を拒否することはできない。

💡【対処ポイント】
→ 売却前に地主との関係性を良好に保っておくことが重要
→ 不動産会社選びも「借地権売却に強い」会社を選ぶのが成功のカギ。


【トラブル事例⑤】借地権付き住宅を親から相続したが、地主と揉めてしまった

● 事例:

父が長年住んでいた借地権付き住宅を相続したが、地主から「借地人が変わるなら契約を終了させる」と言われた。さらに、建物の名義変更や借地権の承諾料について高額な費用を請求され困惑している。

● よくある悩み:

  • 名義変更って必ず必要なの?
  • 地主に更新料や承諾料を支払う必要は?
  • そもそも相続した建物はどう活用すべき?

● 法的ポイントと対処法:

【借地権の相続は「当然承継」】

借地権は、相続によって当然に引き継がれる権利です。地主の承諾がなくても、法的には借地契約が終了することはありません。

【借地借家法 第19条】
借地権の譲渡または建物の賃貸について、地主が正当な理由なく承諾を拒むことはできない。

※相続は譲渡ではなく「承継」に該当するため、承諾は不要とされるのが通例。

💡地主が「相続人が借主になるなら契約解除」などと主張するのは法的に認められないケースが大半です。


● 注意点:

ただし、相続後に以下のような手続きは必要・推奨されます。

内容必要性備考
建物の相続登記(名義変更)必須2024年4月以降、相続登記は義務化されています。
地主への通知任意だが推奨トラブル回避のためにも「誰が相続したか」は伝えておくと安心。
借地権更新料・承諾料の支払いケースバイケース相続時に更新料などの支払いを求められたら、契約内容と過去の慣例を確認。高額請求には注意。

● 相続後の選択肢:

  1. そのまま住み続ける(地代を払い続ける)
  2. 第三者に売却する(地主の譲渡承諾が必要)
  3. 更地にして返還・返還交渉をする(定期借地権の場合など)

● 売却時の注意点:

借地権付き住宅を売るには、地主の**「譲渡承諾」**が必要であり、**譲渡承諾料(目安:土地価格の5〜10%)**を請求されることもあります。

【借地借家法 第19条(再掲)】
地主は、譲渡について正当な理由がなければ拒否できない。

💡地主との関係が悪化している場合は、不動産業者や弁護士を介して交渉するのが得策です。


◆ まとめ:相続した借地権住宅、「知らないと損する」ことも

借地権付き住宅の相続は、法律上はスムーズでも、実務的には地主との関係性・契約内容に左右される部分が大きいです。

✔ 名義変更や登記義務を怠らない
✔ 地主への説明や交渉は冷静に対応
✔ トラブル時は専門家の助けを借りる

を徹底することで、大きなトラブルを防ぐことができます。


◆ 借地権トラブルを防ぐためのチェックリスト

✅ 借地契約書の内容を確認(契約期間/更新条項/譲渡条件)
✅ 借地の種類は?(旧法・一般借地・定期借地)
✅ 地主との信頼関係を維持する努力
✅ 専門家に早めに相談(司法書士・弁護士・不動産会社)


【参考法令まとめ】

  • 借地借家法 第6条(契約更新の正当事由)
  • 借地借家法 第11条(地代の増減請求)
  • 借地借家法 第17条(建て替え承諾に代わる許可)
  • 借地借家法 第19条(譲渡・転貸・相続に関する規定)
  • 不動産登記法 第76条(相続登記の義務)

◆ まとめ:借地権は「正しく理解」すれば怖くない

借地権には所有権住宅にないコストや手間もありますが、法的保護はしっかり整備されています
特に旧法借地権や長期の一般借地権では、地主の都合で一方的に立ち退きを迫られるようなことはありません。

トラブルが起こった場合も、借地借家法などの法的根拠をもとに冷静に対処することが重要です。


◆ トラブル回避のためにできること

  • 契約前に内容を必ず書面で確認
  • 地主との関係性は「信頼第一」コミュニケーションをこまめにとっておくことが大切。
  • 不明点は司法書士や弁護士、不動産の専門家に早めに相談
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